フィリピンで私が遭遇した小さな災難:スリ集団との対決

Pocket

ジプニーで2回遭遇したスリ集団の手口

ジプニーとは

ジプニーの正面写真

フィリピンはマニラ以外電車が無い国です。タクシーは日本と比べればかなり安いですが一般庶民にとっては贅沢な乗り物です。彼らが普段の生活の足として使うのがジプニー。日本の市営バスや都営バスと同じで一定のルートを定期的に走ります。1回7~8ペソ。(16~20円ほど)子供、学生、老人は割引になります。[br num=”1″]始発ターミナルと終着ターミナルの間を行ったり来たりです。途中停留所はありません。途中降りたい場所で『パラポ(降ろしてください)』と告げるか、バスの天井裏を手の甲で叩いて降りるサインを出します。路上でジプニーに乗りたい時はタクシー同様手を上げれば止まってくれます。[br num=”1″]ルート間は大体5kmから8kmくらい。国営や市営ではなく個人運営です。ジプニーをレンタルする資本家がいて月額賃料を車主に支払うシステムです。本数は多く昼間なら2~3分の間隔で走っています。

スリ集団の手口とは

ジプニーの客を狙うスリ集団がいます。3人か4人ひと組でカモと目星をつけた人間の前、横あたりに座りタイミングよく人知れず財布を抜き取って去っていく手口です。カモに話かけて注意をそらそうとするもの、となりに座る実行犯、実行犯から犯行直後に財布のトスを受けるもの(実行犯証拠隠滅のため)、全体的な監視役など各自役割があるようです。
犯罪者をイメージした仮面

第一戦目は完敗

ある日の事、ジプニーの発着所の車内で出発を待っていたところかなりでかいふとっちょのあんちゃんが私の右となりに座りました。前にはきれいな女性が2名。発着場では車内が満席になるまで出発しません。どんどん人が乗ってきます。すると隣の大柄なあんちゃんは席をつめるふりをして体を強引に摺り寄せてきます。[br num=”1″]出発してしばらくすると大柄のあんちゃんと前の女性2名と大柄のあんちゃんの右隣のお兄さんがジプニーを降りて行きました。それからしばらくして私が目的地付近で降りようと席を立ったところズボンの後ろポケットが軽い感じをおぼえました。ポケットを探ってみると財布がありません。周辺を見回すとデブあんちゃんの右隣の席においてありました。クレジットカードと銀行カードは無事でした。ですが日本円にして1万円くらいのフィリピンペソが抜き取られていました。完敗です。私は抜き取られた事すら気づいてなかったわけですから。
ズボンの後ろポケットに入っている財布

リターンマッチ

別のふとっちょ実行犯

その事件以来私はフィリピン外出時にはキャッシュカードやクレジットカードは持ち歩かなくなりました。それと財布はチャックやボタンがついているポケットに収めています。
それから1年くらいたったある日の事です。別の巨体ふとっちょあんちゃんが隣に座り、体を寄せてきました。『来たな。』私は心の中でつぶやきます。ここで取るべき行動は一つです。『あれ、忘れ物しちゃった』とか周りに聞こえるように白々しく独り言をつぶやいてジプニーを降りスリ集団から逃れる事。
ただ私はここで馬鹿な事を考えてしまいました。もし財布の入ったボタン付きのポケットを手で抑え続けたら奴らが諦めるかどうか知りたがったのです。ある意味挑発です。私が彼らをスリ集団と見抜いている事を相手に宣言してます。素人の武勇伝ほどあぶなっかしいものはありませんが私は自分の好奇心を抑える事ができませんでした。前回やられっぱなしだったので今回は窃盗団に一泡吹かせてみたいという気持ちがあったのかもしれません。今思うと危ない事をしたと後悔しています。(絶対にまねしないでください。)
事件当時履いていた半ズボンのボタン付きポケット部分
2回目のスリ集団と遭遇した時に履いていたズボン。ユニクロのハーフパンツです。ボタンの上をしっかり手でガードしました。

100~120キロはあると思われる巨漢の男は他の乗客がはいって座るたびにスペースをつめる動作を装い私に擦り寄ってきます。『ごめん、ごめん』と言いながら善良そうな笑顔を見せます。ですがポケットは手でガードされているので財布は無事です。するともうひとりの男が『今何時?』、『終着地までどれくらいかかる?』など私の注意をそらそうと白々しい質問をしてきます。答えながらもポケットから手を離さないので問題ありません。[br num=”1″]そうこうしているうちにしばらくするとでこぼこ道で車内がおおきく上下に揺れました。私もたまらず両手をあげて手すりを掴みました。その瞬間です。となりのデブ君が財布を抜き取ったのです。私はスられた感覚さえなかったですが念のためポケットの上から財布の所存を確認しました。『ない!』わずか1秒~2秒の間におデブ君は私に気づかれる事なくボタンを開け私の財布を抜き取ったのです。神業です。財布には8千円くらい入っていました。

『すっとぼけ作戦』

そこで私は『財布どっかいっちゃった』とまず人が聞こえるようにつぶやきました。ちょっと探すねと言っておデブ君の後ろあたりを探ります。するとおデブ君の汚いケツの下に座布団替わりで私の大切な財布が敷いてありました。右隣の仲間一味にトスする直前だったのでしょう。私はそれを掴んで、『あったあった。邪魔だったでしょ。迷惑かけたね。サンキューサンキュー』とすっとぼけて笑顔でいいました。そしてズボンではなくショルダーバックの中に財布をしまいました。

ジプニー車内の様子

私の行動は万が一スられたどう動くべきか手でガードしていたときに考えておいたものです。意表をついて相手の戦意をなくさせるのが一番いいと。もし私がその時『泥棒!』と騒いでいたら考えられるシナリオは3つ。①黙って逃げられる、②私を2~3発ぶん殴ってひるんだすきに逃げられる、③私をボコボコにして財布とショルダーバッグを取り上げられて逃げられる。どれも嫌です。そして2番目のケースが確率としては一番高いです。すっとぼけ作戦が一番いいと事前に決めておきました。
犯行集団の顔には動揺が見て取れます。想定していなかったシチュエーションでどうすればいいかわからないようです。無言のまま1分くらい過ぎるとリーダー格のやつが『ちっ、今日はついてない』という顔で他のメンバーに目配せしてジプニーを降りて行きました。
彼らが立ち去ったあと念のため財布の中身を調べましたが中身はそのまま。その様子を見て他のフィリピン乗客たちがくすくす笑っています。

帰宅してお手伝いさんに話したところ『スリ集団の人たちはバスを降りたあとお前がドジ踏んだんだ、違う、お前がどんくさいからだ、など互いに罵り合っているに違いないわ』と言ってゲラゲラ笑っていました。
お手伝いさんによりますとスリも名人クラスだと腕時計を人知れず瞬間的に抜き取る芸当もできるそうです。
2回目は単純に運がよかったです。もしすこしでも私のリアクションが遅ければ私の財布は実行犯のケツから隣の一味に渡っていたでしょう。そうなると私はお手上げです。隣の隣の人の周辺までチェックできません。強引にやれば暴力沙汰に発展しかねません。それとすっとぼけマジックも次回通用するかどうかわかりません。次出会ったら一目散に逃げます。

スリ回避方法

発着所からの乗車が狙われる

二つのスリ事件には共通点があります。ジプニー発着所で始発から乗った時に事件は起こっています。今思うと彼らは発着所周辺でカモが現れるのを隠れて待っていたと想定されます。
そしてスリ集団の各自が自分の役割を発揮できる座席を確保できるタイミングになれば乗り込んできます。車内が半分くらい埋まった時くらいですかね。がらがら状態でカモを取り囲めばバレバレでカモに警戒されるでしょうから。
事件後私はできる限り発着地からの始発は乗りません。やむを得ず発着地乗車しなければならない時は2番目に待機しているがらがらの車両にのり、運転手に一番近い片側に人が座れない席か降車口に一番近く片側に人が座れない席を選びます。
スリ集団も百選練磨でいろいろ対策は考えてくるので油断はできませんが、その後スリ集団に遭遇しておりません。今回の事件は2回ともクラーク・アンヘルス地域で週末の昼に発生しました。
バリバゴのジプニーターミナル

その他ジプニーに乗る際の留意点

治安が特に悪い地域もあるマニラではジプニーに乗らないほうがいいです。テレビのニュースで見たのですがマニラでは拳銃を持った強盗がジプニーに乗り込んできて財布と携帯を巻き上げて立ち去るという事件が起きています。私はマニラでは電車かタクシーを使い、ジプニーには乗りません。
夜はどの地域でもジプニーは回避したほうがいいです。犯罪は基本夜に集中しておりますので。セブシティで夜に街のゴロツキに車内で絡まれたが勇気ある地元のおばあちゃんが助けてくれたおかげで無事だったというお客さんの話を聞いた事があります。夜ジプニーに乗るなら大人数で利用しましょう。それとジプニーは夜交渉次第でタクシーにもなってくれます。5kmくらいなら200~300ペソで利用できると思います。その場合他人は乗りません。
ジプニーの中で目をつぶったり、寝たりしてもだめです。それとフィリピンで外にでる際には治安対策のため基本的に運動靴を履いておきましょう。

フィリピンでの邦人被害はこちらでもまとめております。フィリピン留学生犯罪被害実例:第一次、第二次的体験談

Pocket