フィリピン留学後にアメリカ人と話ができるようになるか
フィリピン留学後に欧米圏のネイティブスピーカーに全然通用しなかったという記事をウェブ上でよく見かけます。
実際『フィリピン留学でネイティブに通じますか?』『フィリピンで12週勉強しましたけどアメリカ映画がよく理解できない』などの相談メールをいただきます。
本件について私なりの考えを述べさせていただきます。
答えはYesとNo
この問いに対する私の考えは答えはYes(通じる)とNo(通じない)です。
Yesの場合
フィリピン英語はイギリス英語よりはかなりアメリカ英語に近いです。ですがアメリカではアメリカで独自に育った英語の使い回しがあります。
フィリピン英語はアメリカで独自に発達した地方の癖を取り除いた素の部分の英語が基本です。
ですのでフィリピン英語でもアメリカのレベルの高い綺麗な英語を使う人たちと交流するには問題ないと思います。
大学や高校の先生、医者、弁護士など高度な教育を受けている人たちにこの傾向が強いです。この場合はYesです。フィリピンで12週くらい語学留学してある程度日常生活で不自由しないくらいの会話力がついたとすれば基本的な意思の疎通は難しくありません。
Noの場合
数十年前の私のアメリカ大学時代に当時のルームメートとたまに長時間議論することがありました。相手は私の言いたいことを80%以上理解していたと思いますし、私も彼のいいたいことがだいたいわかりました。ただそのルームメートが友達を呼んで5~6名でパーティーをやってネイティブモードに入ると聞き取れない、ついていけないケースが結構ありました。
英語ビギナーが12週のフィリピン留学後のアメリカ人同士の輪の中に入ってやっていくのはきびしいです。この場合はNoになります。
だからと言って意思疎通がまったくできないという事ではありません。長い話はできなくても基本的な事は通じます。最初は早いスピードや独特の表現などで戸惑ってしまってわからなくても慣れてきればある程度わかるようになってきます。
英語学習で何が重要か
英語学習で重要なのはフィリピン英語がアメリカなどですぐに通じるかどうかではなく、慣れればばネイティブにも通用するレベルまでどうやって持っていくかだと思います。つまり英語を学習対象からコミュニケーションのツールに化けさせること。一定レベルまで上がってしまえばあとは伸ばすだけです。そこから英語学習を断念する人はいなくなります。アメリカ英語もイギリス英語も怖くなくなります。そして残念な事にこの域までたどりつけなくて放棄してしまう日本人がたくさんいます。
どこの留学が効率的か
フィリピン、アメリカ、オーストラリア、イギリス、カナダ、ニュージーランドなど英語の留学先はいろいろあります。
欧米留学の場合英語を使ってなにかを学ぶという部分では多数の分野で世界一です。この部分ではフィリピン留学は足元にも及びません。ですが英語そのものを一定レベルまで引き上げさせる指導ではフィリピン留学が他国より優秀だと思います。
英語学習環境でフィリピン留学にあって欧米留学にない重要なものを下記に並べました。
マンツーマン授業の存在
欧米留学では指導方法がグループ授業のみで構成されているのに対してフィリピン留学はマンツーマン授業が主体で構成されています。
自分と先生しか存在しないマンツーマン授業の世界であらゆるレベルの個人に対してそれぞれのアプローチで対応します。受講生徒も聞き流すだけの傍観者という姿勢はゆるされません。
規則と管理の教育システム
欧米留学では授業に参加する、自習する、遊ぶ、休む、すべて個人の自由です。
フィリピン留学では規則やタイムテーブルがあり、学生がそれに従わなければペナルティがあります。一般学校に似ています。
キャンパス内に宿泊できる寮があり、定時に3度のご飯が提供され、掃除や洗濯もお手伝いさんが無料で代行してくれるので学生は勉強だけに専念できる学習環境が与えられます。
英語を使うのが楽しいと思わせる環境
フィリピン語学学校寄宿舎のルームメートは基本外国人になります。台湾、韓国、ベトナムなど。2~3週過ぎればルームメートと自然と絆が深まり、フェイスブックを交換してお互いの国を訪問する事もよくあります。こうなってくると英語の勉強が楽しくてしょうがなくなります。
講師はフィリピン人。友達はアジア人。とっつきにくい欧米人よりすーっと心の中に入りやすいです。英語が学習対象でなく、外国人とのコミュニケーションツールである事を体験をもって知らしてくれます。
アメリカの語学スクールでは講師以外の白人との接点があまりないので、語学学校の日本人生徒同士で固まりいつも一緒に生活するというパターンをよく見ました。
ネイティブ英語がすべてではない
英語に標準語はあるのか?
残念ながら英語にスタンダードと呼ばれる指標はありません。アメリカのワシントンで使われている英語やイギリスのロンドンで使われている英語が世界基準となっているなら話は簡単です。それに向けてまっすぐに進むだけでいいです。でもどちらも標準語として認定されておりません。
アメリカもイギリスもオーストラリアも歴史をへて地元に密着した独自の英語を発達させました。独特の発音や言い回し、スピードがあります。その領域に踏み込むためにはさらなる時間と努力が必要です。翻訳家や通訳、ネイティブを上司に持つ人などでしたら必要ですが通じればいいレベルの一般人がそこまで踏み込む必要があるのかと時々考えます。
世界の英語人口は20億人
ウェブ上で統計をさがしますと世界で英語を話す人口は20億人と推測されております。世界の英語人口は何人?[br num=”1″]アメリカ、イギリス,オーストラリアなど欧米諸国の英語人口は4億人くらい。無視はできませんが、それがすべてではないです。人口で見ればネイティブ英語は少数派です。近い将来働く英語人口の4人に1人はインド人になるという指摘もあります。
先に申し上げたようにフィリピン英語は世界の隅々の英語ユーザーには通じやすい英語です。フィリピンである程度の会話力を培うことができれば全世界の20億の人たちにアクセス権を得たようなものです。20億人は70億と言われる世界総人口の28%です。
なのでまずは世界中の人とコミュニケーションを取れるくらいまで自分の英語力を引き上げる。あとは個々人の希望や環境、必要状況に合わせて臨機応変に対応していけばいいと私は考えます。
ダライラマ法王の言葉
最後にダライラマ法王が日本人はもっと英語を勉強したほうが世の中の役に立つと言及されておられたのでその部分を引用して終わりにいたします。
『また、日本の科学技術の専門家たちは、十分な知識と経験があるのですから、他の開発途上国に行ってもっと貢献するべきだと思います。そこで、日本人はもっと英語を勉強するべきだと私はいつも言っています。
特に日本の若者たちは、英語の能力を身につければ、開発途上国で本当にすばらしい貢献ができますし、それによってもっと自分に自信を持つことができるからです。自分は人の役に立つ人間なのだと思うことで、自信が持てるようになれますし、満足感も得られます。これは人間にとってとても大切なことだと思います。小さな島国の中で縮こまって暮らしていては、人生に意義を見出すことはできません。』
(出典:池上彰著、池上彰と考える、仏教って何ですか?電子版 飛鳥新社)