欧米留学、ネイティブ英語が絶対ではない

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電卓でEnglishという言葉や他のアイテムをたたき出している合成写真
アメリカ大学時代のお話です。
『もう少し英語を勉強しろよ』と現地の大学生によく言われました。忠告は甘んじて受けましたが、私の変な発音をまねて馬鹿にする人間やはっきり見下しているような態度をとる輩に対してはこう言いました。『私の母国語は英語ではなく日本語です。ですがあなたたちと交流するためにここまで英語を磨いてきました。もしあなたが私を友達と思うのであればすこしくらい英語が変でもあなたたちが私の英語力に歩み寄って理解するよう努めるのが本当ではないでしょうか。私は日本語でしたら自由に使えます。あなたは2か国語しゃべれますか?』
アメリカにはアメリカがなんでも世界一なので世界の人々はアメリカ人が使う英語に合わせるべきだと信じ、自分たちの英語レベルに届かない外国人を見下すアホな輩が大人の中にもたくさんいます。困った人たちです。
一方日本でも欧米英語をほとんど絶対的に敬い、フィリピン留学などを取るに足らない物としてこき下ろす輩がいっぱいいます。つまらない人たちです。

ネイティブスピーカーは少数派

世界の国旗で作られた地球儀
地球はグローバル化が進みどんどん狭くなっています。英語は欧米人だけのものでなく、英語ユーザーたちのコミュニケーションツールという側面が強くなってきています。
世界の英語ユーザーは18億とも20億ともいわれていますが5年前に発表された統計記事で当時の英語人口は17.5億人と推定されていました。世界人口の4分の1がイングリッシュスピーカーだそうです。その中に含まれるネイティブスピーカー人口は3.9億人。非ネイティブスピーカーが占める割合が78%、ネイティブが22%です。世界人口約70憶人のうち英語人口はどれくらい?
この記事のコメント欄に以下の文章が掲載されておりました。『昨今、英語は「国際共通語」と呼ばれるようになり、ネイティブの英語に合わせるのではなく、非英語圏の英語に合わせる時代が到来しています。』
私もこの方の考え方に同意いたします。
この記事の統計から5年。欧米先進国はなかなか人口が減少あるいは横ばい状態で、発展途上国は人口が急増している事などからネイティブ人口と非ネイティブ人口の比率はさらに広がっているものと思われます。
英語を勉強する方法も多様化しており、欧米留学以外の選択があってもいいと思います。

英語力をどこまで磨き上げるかという問題

ヨーロッパの名峰マッターホルン
ネイティブスピーカーとコミュニケーションをとれる事とネイティブスピーカーのように話せるようになる事とは違います。2段階にわけて区別して考えるべきだと私は思います。
問題はどこまでやるかです。
ネイティブや非ネイティブ英語ユーザーと英会話する事はさして難しくありません。読む、聞く、書く、話すの中で会話だけならフィリピン留学12週くらいで届きそうなレベルです。ここまでが第一段階です。
ですが二段階目のネイティブと同等のレベルというのはかなり険しい道になります。年輪の刻まれた異文化の言語を自由自在に駆使できるようになるにはかなりの忍耐努力が要求されます。
私のケースを見てみます。大学を卒業するためにアメリカに3年半いました。入学時の英語レベル中初級程度。何とか卒業はできました。ですが現地アメリカ人たちが輪を作って遠慮なしのネイティブモードで会話に突入した場合にはついていけませんでした。だからと言って彼らとコミュニケーションができないという事ではありません。その中の誰か個々人と個別で会話するのでしたら十分通じ合う事ができました。その状態は卒業当時も今もあまり変わりありません。現在も第一段階のままです。たまにセンスがあってさらさらっとできてしまう人もいますが私は凡人ですのでそうなりません。第2段階はたとえアメリカに在住しようが自分から目標をさだめて近付いていかないと到達できないポイントだという事を体験で知りました。
しかし現実問題として第一段階をクリアすればネイティブも含めた外国人と意見交換できますし、ビジネス交渉だってできちゃいます。それくらいで十分と考えるのも一つの判断です。もちろん翻訳業や通訳業など専門性のある分野ではこれではいけませんが。

フィリピン留学は欧米留学に劣るのか?

フィリピン語学学校のマンツーマン授業の風景
『フィリピン留学に行ってもネイティブに通じないので2度手間になる』と説明する欧米留学カウンセラーたちがいます。私のお客様からよく相談内容として聞かされる話です。
私の答えは『否』です。
フィリピン講師と十分語り合えるくらいのレベルにある人なら最初聞き取れなかったネイティブの方でも何回かあって話しているうちに理解できるようになれます。慣れていないだけです。
ネイティブの中でも特に大学や高校の先生、弁護士、医者、会社社長など高度な知識を持っている人たちとの会話はかなり通じやすいです。英会話講師が使うような綺麗な英語を使う傾向があるからです。
このレベルでネイティブと友達付き合いもできますし、ビジネス交渉などもできるはずです。いきなりは難しいかもしれませんが、慣れてくればお互い通じ合えるようになれます。すくなくともフィリピン人講師と自由にやりとりできる方なら大丈夫です。二度手間というやり直しでなくエリア英語別の部分修正です。問題の本質はいきなり通じるか通じないかではありません。どうやったら修正できるレベルまでもっていくかのほうがよっぽど重要です。それについては後ほどご説明いたします。

欧米留学の凄い所

ノートブックの画面に彩られるアメリカ国旗
欧米留学に対して否定的ともとられる事を書きましたが、私自身アメリカ留学から計り知れない恩恵をもらっていて今でも感謝しております。
正直アメリカの大学のレベルの高さに舌を巻きました。例えば入学してすぐに選択した宗教という必修科目。それまで宗教に関しては何の関心もなく知識もない私でしたが学期が終了する頃には何故人々は宗教を必要としたのか、宗教はどのように生まれたのか、世界にどんな宗教があるのか、世界の宗教人口分布図はどうなっているのか、各宗教が持つ特徴などがインプットされていて言葉で説明できるほどの知識が植え込まれました。宗教、歴史、ビジネスその他どんな分野でも科目を通過できるほどの勉強をすればだれでもそれくらいの知識が備わります。学年が上がればもっと突っ込んだ難しい内容で知識+自分の考え方を要求されました。こんな過程を4年間パスし続ければどんな人間でも立派な知識人に育つ事になります。アメリカの大学のレベルの高さを恐ろしいと感じたほどです。
フィリピン留学では英語自体を学習する事自体がゴールです。アメリカのように英語を使って最先端のっ知識を学ぶという事はできません。これがフィリピン留学の限界です。
またフィリピン留学ではアメリカの独特な言い回しやしびれるような表現や現地限定で使われているスラングなどもなかなか習う事はできません。こういうものはアメリカの生活の中にあふれています。フィリピン留学もうひとつの限界値です。
英語中級以上のレベルにあり、第二段階の英語レベルを目指す方、教育機関で学ぶ方にとっては欧米諸国での学習は魅力的です。

英語ビギナーの欧米留学注意点

イギリスの国旗を掲げてロンドンを案内するイギリス人女性
欧米留学の最大の弱点は英語ビギナーを中級レベルに引き上げる効果的なシステムが未だ確立されていないという部分です。高いお金を使ったにもかかわらず第一段階をクリアできる失敗に終わるケースが目立ちます。
アメリカ大学時代の冬休みにロサンゼルスの語学学校の寄宿舎で2週間居候させていただいた経験があります。15~16名の日本人留学生がいました。ほとんどの方が片言単語のキャッチボールでしか会話ができませんでした。3ヶ月、半年、1年以上と滞在期間はまちまちでしたが英会話力はフィリピン留学4~8週レベルでした。午前中グループ授業を受けてそれ以外は日本人たち同士で集まって日々を過ごすと女性の留学生が言っておられました。
これは数十年前のお話ですが今でも私のもとにオーストラリアや時にはアメリカにいる日本人留学生からフィリピン引っ越し留学を希望した相談メールをコンスタントにいただきます。英語が伸びないからだと彼らはいいます。今も大小の差はあれ現実はあまり変わっていないようです。
もちろんこのような例がすべてではありません。うらやむほど英語がうまい日本人留学生も何人か会いました。ただ英語初級者の場合失敗するリスクがある事は記憶しておいたほうがいいです。
フィリピン留学は学生に徹底的に干渉いたします。授業は講師1と生徒1でつきっきりに教えます。朝から晩までタイムスケジュールがびしっと決まっていて授業に参加しなかったり、宿題を提出しなければ罰せられます。週末外出禁止などの処置がなされる場合もあります。寝床もごはんもすべて学校が提供します。
だから英語初期段階の留学は欧米よりフィリピンのほうが絶対にいいと言っているわけではありません。マイペースな方、誰かに頭を押さえつけられたくない方などにとってはフィリピン留学はマイナス要素満載です。
しかし12週~16週でほとんどの留学生を英語を使って他国の人たちとコミュニケーションをできるような育ててしまう失敗の少ないフィリピン留学を無視する事はできません。
日本で欧米留学学生の数が減少し、フィリピン留学生の数が急増しているのは、英語の文化、歴史で大きく劣るフィリピンが結果優先の英語指導システムを確立させた事による営業努力の差でもあると思います。欧米では自由主義、個人本位主義が考え方の根底にありますすのこの差を縮まるようには思えません。

おわりに

そもそも英語には明確な基準がありません。アメリカ英語もイギリス英語も国際基準ではなく地域で使われている地方言語です。欧米ネイティブを無視する事はできませんが、絶対ではありません。
いろんな学習のアプローチがあっていいと思います。
ただ英語初級者の方はどのようにすればネイティブレベルになれるかと考えるより、どのようにすればネイティブ、非ネイティブとコミュニケーションを取れるようになるかを考えたほうがよろしいかと思われます。
第一段階をクリアすれば英語の楽しさを実感できます。今まで机の前の学習対象だけの存在であった英語が実際異国の人とふれあって心を通じる話ができるツールに変貌しますのでこの感覚を身に着けた人は残りの人生で英語を放棄する事はなくなります。あとは必要によって第二段階に踏み込むかどうか決めればいいでしょう。
とりあえずはそのレベルまで行く。あとは必要性によりそれ以上深く踏み込むか否か決めればいいです。
第一段階をクリアするのにネイティブ留学やネイティブ英語は絶対ではありません。こだわる必要はないです。

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