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2016年10月に起きたフィリピン警察官による韓国人チイックジュさんの誘拐殺人事件。あれから一年になります。
デュテルテ大統領に『麻薬戦争はいったん中止して悪徳警官撲滅作戦を推進していく』と言わしめたほど社会を揺るがした劣悪な事件でした。
事件が起こったのはマニラから北80kmにあるアンヘルスという街のフレンドシッププラザという集団団地(ヴィレッジ)内。私もここフレンドシッププラザに2013年から1年ほど家を借りて住んでおりました。チさんとの面識はありませんが、敷地内の道ですれ違って会釈くらいは交わしたかもしれません。
フレンドシッププラザの正面玄関
写真はフレンドシッププラザの正面ゲートです。

事件のあらまし

拉致と殺害

拉致殺人事件はフレンドシッププラザのチさんの自宅に悪意を持った現職警察官2名がノックした所から始まります。2016年10月18日の事です。
対応にでたチさんに対して2名の現職警察官は『麻薬関連事情聴衆のためご同行を願う』と偽造の家宅捜査令状を見せて連行。そのまま80km離れているマニラのフィリピン国家警察本部に連れて行き本部内の駐車場でチさんを絞殺。その日のうちに火葬場で償却し、証拠を隠滅。
一方犯人グループは殺害後メールでチさんの奥さんに800万ペソ(約1,760万円)の身代金を要求。家族は要求に応じて身代金500万ペソ(約1100万円)を支払います。残りの300万ペソはチさんの安否の確認がされてからと犯人側につたえます。最初の身代金要求時点ですでにチさんは殺害されておりますので残金の支払いはなされておりません。
チイックチュさんの写真
写真左側がチイックジュさんです。

逮捕

2017年1月下旬本件に関する調査が進み警官3人を含む容疑者8人の関与が明らかになりました。ドゥテルテ大統領はその報告を受けて直ちに会議を招集し、警察に「警官全員を浄化し、悪党のリストを提出」するよう指示します。
実行犯たちはつぎつぎに逮捕。首謀者とみられる警察幹部ラファエル・ダムラオも3月に拘束され、事件から1年経過した現在、地元新聞によりますと拉致殺害事件の全貌はまもなく明らかになるとの事です。
首謀者とみられるラファエル・ダムラオ

写真は首謀者とみられるラファエル・ダムラオ。本人は犯行を否定。

チさんの死で思うこと

前代未聞

前代未聞が連なる事件です。

現職警察官が職権を乱用して白昼堂々と被害者を被害者の家から誘拐拉致し、その日のうちに殺害を決行。
殺害現場はフィリピン警察官の聖地である警察国家本部の駐車場。絞殺に及んだ特定スポットはフィリピン警察トップの執務室から数歩離れた所だそうです。
そして首謀者は警察高官。
恨みもいさかいも怨恨も血族間のあらそいもなにもない。ただお金を持っているという事を突き止めただけで計画殺人の対象にしてしまう凶悪犯たちの不条理さに憤りを感じます。
マニラにある警察国家本部
写真は犯行が行われたマニラの国家警察本部の広場。

防ぎようのない犯罪

チさんの自宅があるフレンドシッププラザは野球場くらいの広さがあり、200くらいの賃貸家屋が並びます。住人は中流階級のフィリピン人、韓国人、日本人、欧米人などです。家賃は大きなリビング、キッチン、個別の部屋が4~6個ついて8~10万円くらいです。大家族が各自部屋を振り当てられて暮らせます。
フレンドシッププラザは二つの出入り口に常時複数の警備員が配備されており、自転車での巡回も頻繁に行われます。部外者の出入りは厳しくチェックされ持ち物検査も行われます。警察官のような公権力保有者が職権を乱用しない限り犯罪が起こりにくい場所です。
知人の住民によりますとチさんはサムソンの下請けを請け負ったり、人材派遣業を展開したりと、手広く事業を展開するバリバリのビジネスマンだったそうです。働き盛りの50代。チさんの胸中を思うと心が痛みます。
フレンドシッププラザとその前の道路
写真はフレンドシッププラザ前の道路。

やるせない気持ち

犯人たちによりチさんが埋められた場所が特定された後、チさんの奥さんは警察本部に呼ばれ、本事件担当総責任者であり、フィリピン麻薬撲滅国家対策組織長官であるローエル・ボリバーさんと1時間に渡り対談したそうです。
会談後に行われた記者会見でボリバー長官はチさんの奥さんの言葉を以下のように引用いたします。

『主人は働いて稼いでフィリピンで貧しい子供たちのための財団をつくるとさえ言っていました。そしてこの地で二人で老年を迎えると』『このような仕打ちを受けるようなどんなひどいことを私たちがしたというのでしょう?』What did we do deserve to this?(英語)

やりきれないですね。

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